前回の記事でちらと書いたけど、先日は毎年恒例の合唱団の有志発表会があった。
僕は今年はソロ2曲とトロンボーン1曲とアンサンブルが2組3曲、全部で6曲を歌った。
今回は内容がてんこ盛り過ぎたのか集中できず、ほとんどの曲が満足いく出来ではなかったので非常に残念だった。
ソロで歌ったのは、モンテヴェルディの世俗曲2つ。
Si dolce è'l tormento
(この苦しみの何と甘いことか)
Si dolce è'l tormento ch'in seno mi sta,
Ch'io vivo content per cruda beltà.
Nel ciel di bellezza s'accreschi fierezza et manchi pietà:
Che sempre qual scoglio all'onda d'orgoglio mia fede sarà.
なんと甘いのだろう、この胸の苦しみは
この残酷な美しさのために 僕はよりいっそう幸せに生きるのだ。
この美の激情は天で花開くだろうが、憐れみは僕には与えられない
僕の愛情は絶え間なく打ち寄せる高慢の波に浮かぶ岩のようなものだから。
La speme fallace rivolgam' il piè.
Diletto ne pace non scendano a me.
E l'empia ch'adoro mi nieghi ristoro di buona mercè:
Tra doglia infinita, tra speme tradita
Vivrà la mia fè
偽りの希望よ、僕を惑わせよ
平和も喜びも僕には訪れない
僕が愛するあのひどい人は、僕が休むことさえ許さない
永遠の苦痛、打ち砕かれた希望、その中でさえ
僕の愛情はなおも生き続けるだろう
Per foco e per gelo riposo non hò.
Nel porto del cielo riposo avrò.
Se colpo mortale con rigido strale
Il cor m'impiagò, cangiando mia sorte
Col dardo di morte il cor sanerò.
炎にも氷にも休む場所などない
安息の場所は天国でしか見つからないだろう
もしも矢の一撃が僕の心臓を貫き
運命が変わってしまうならば、
その死の矢こそが僕を癒すのだろう
Se fiamma d'amore già mai non sentì
Quel rigido core ch'il cor mi rapì,
Se nega pietate la cruda beltate
Che l'alma invaghì:
Ben fia che dolente, pentita e languente, sospirimi un dì.
僕の心を盗んだその冷たい心が
恋の炎を感じたことがないのなら、
僕の魂をとりこにした あの残酷な美しい人が
あわれみを拒否するならば
いつの日か彼女も苦しむがいい
傷つき、後悔し、ため息をつきながら
この曲は、僕が生まれて初めて聴いたモンテヴェルディだった。
10年くらい前、人生最大級に病んでいたころ、テレビをつけたらたまたまやっていたのが古楽アンサンブル「アッコルドーネ」の公演で、ちょうどこの曲のところだった。
なんて美しい曲だろうと思って、それからモンテヴェルディの曲をたくさん聴くようになり、ようやく人前で歌える運びになったのが嬉しかった。
もうひとつは"Shcerzi musicali(音楽の諧謔)"という曲集から"Quel sguardo sdegnosetto(あの軽蔑の眼差しは)"という歌だ。
Quel sguardo sdegnosetto
(あの軽蔑の眼差しは)
Quel sguardo sdegnosetto lucente e minaccioso,
quel dardo velenoso vola a ferirmi il petto,
Bellezze ond'io tutt'ardo e son da me diviso
piagatemi col sguardo, Sanatemi col riso.
輝かしくも恐ろしい、あの蔑むような視線が
毒矢のように僕の心を撃ち抜いた。
美しい人、君のために僕は焼かれ、君に全てを捧げよう
その視線で僕を傷つけ その笑顔で僕を癒してくくれ
Armatevi, pupille d'asprissimo rigore,
Versatemi su'l core un nembo di faville.
Ma 'labro non sia tardo a ravvivarmi ucciso.
Feriscami quel squardo, ma sanimi quel riso.
この目よ、武装するがいい その厳格さで
一筋の火花を この心に注いでくれ
唇よ、ためらわないで 殺されたときにこそ僕は生きる
視線よ、僕を打って、笑顔よ、僕を癒して
Begl'occhi a l'armi, a l'armi!
Io vi preparo il seno.
Gioite di piagarmi in fin ch'io venga meno!
E se da vostri dardi io resterò conquiso,
Feriscano quei sguardi, ma sanami quel riso.
美しい目、武装せよ!武装せよ!
君の的に、僕は盾を用意しよう
たとえ僕が消えたとて 君は喜んで僕を傷つける。
もし君の矢に征服されたならば
どうかその目線で僕を打ち抜いておくれ
でもその笑顔で僕を癒しておくれ
どちらの歌も、「大好きなあの人につれなくされるほどに燃え上がる恋心」を歌った歌だ。ちょっと気持ち悪いぐらいに。
だがそれがいい!グッ
この2曲目は、"Sguardo(視線、フランス語ならregard)"という語で始まるように、まさに視線にまつわる詩だ。
西洋の文化では、人の視線というのは魔力を持つとされ、昔から非常に恐れられてきた。
見ただけで人を石に変えてしまうギリシャ神話のメデューサなんかがいい例だし、トルコやギリシャ、中東辺りには目をモチーフにした魔よけがたくさんある。
こんな風に、誰かの視線に魅入られて破滅的なほど好きになってしまう、なんて経験、したいなぁ…。
今年は初めて、トロンボーンを披露することにしてみた。
人前で楽器を吹くのは10年以上ぶり、ソロでは初めてだったのでかなり緊張した。
選んだのはヘンデルのオペラ「セルセ」より「オンブラ・マイ・フ」。「ラルゴ」という愛称でも知られているアレだ。
そんなに長くないし、難しい曲を選んだつもりはなかったんだけど、大変だった…。
歌の曲を楽器で吹くとき、まず第一に歌をイメージして吹くことが求められる。歌うように息を吸い、歌うように吹く。まず目指したのはそこだ。
ただ楽器の特性上、たとえば息継ぎの位置にしても歌と全く同じにすると、どうにもうまく行かなくなるところがある。
そういうところをひとつずつ作戦を立てるという作業が、けっこう面白かった。
歌が要求するものと楽器が要求するもの、ふたつのバランスをどう取るかという問題が、今後の歌にとっても楽器にとっても勉強になった。
また来年も楽器で出よーっと。
そしてアンサンブル。
ひとつはモーツァルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」から"Fra gli amplessi"の二重唱。
モーツァルトのオペラ、特にこの「コジ」はどの曲もアンサンブルが美しくて、うまく行くと大変に気持ちがいい。
オペラのワンシーンということで、初めて少し動きをつけて演技(というよりはちょっとした小芝居)を取り入れた。
本当はこの動画のように大胆にやりたかったけど、さすがに恥ずかしいよね////
一番大変だったのは、友人4人とやったミュージカル。
実は去年もミュージカル企画「エリザベート」をやったんだけど、今年はディズニーメドレーで行こうということになった。
僕はアラジンの"Whole new world"と、メリーポピンズの"Supercalifragilisticexpialidocious"の2曲。
まあディズニーだし、などと余裕こいてたあの頃の自分をぶん殴りたい。結局どちらの曲も、最後まで歌詞(英語)が覚えきれずに本番でもミスをし、アラジンに至っては相手役のジャスミンにまでミスが飛び火するという有様。
さすがに反省した。
"Supercali..."はまさかの振りつきで、高校の体育の選択でも「創作ダンス」がイヤ過ぎて仕方なく「柔道」を選んだくらい踊れないのに、その上歌うとかいうマルチタスクで完全にオーバーヒートしてた。
反省…orz
来年は出来ないことは初めから出来ないって言うことにする。というか自分の能力をもっと把握しとけって話だ。ダンスはあかん、ダンスだけはあかん…!
なんだかんだ、ミュージカル企画は楽しいので来年も(誘われたら)乗りたいですな。(今年の件で降ろされる可能性あるぞコレ)
そんな、悲喜交々の有志発表、今回の課題はやっぱり「集中力」かな。
実は既に来年の企画として誘われてるのもいくつかあって今から楽しみだけど、曲数では今年より多くなる可能性があって戦々恐々である。
集中力を磨くために、まずは座禅でもしてみる……?